『いつくしみの特別聖年』

 

     主任司祭 場崎 洋 神父

 

11月13日の夜、フランス・パリで「悪夢」が襲いました。市内中心地で爆発や乱射が

相次ぎ129名が犠牲となり、重体を含む負傷者は300人にもなりました(11月16日現

在)。オランド大統領は非常事態を宣言し、「イスラム国」の犯行と断定し、テロに

屈服せず戦い続けるとしました。地方メディアは戦後最悪のテロだと伝えています。

同組織によるテロの脅威が世界に拡散している事態を鮮明にした出来事です。各国の

首脳はテロへの戦いに不退転の決意で挑むことを強調しました。イスラム国はフラン

スがシリアで行った同組織に対しての攻撃の報復だとして声明を送っています。

 人類は「歯には歯を、目には目を」という名目で戦争を繰り返して来ました。人間

は復讐と言う憎悪に満ちた世界に引きずり込まれようとしています。憎しみと戦争は

負のスパイラルです。しかし、人間には神の似姿として創造された寛容な心と憐れみ

深い愛を持ち合わせています。

 わたしたちはこの悪夢の出来事を点として捉えてはなりません。ヨーロッパが中東、

アフリカを植民地化した時代まで遡らなければなりません。歴史を俯瞰しながら尚い

っそう和解と平和を願いながら祈り続けなければなりません。

 憎しみのあるところに愛を、争いのあるところに平和を、分裂のあるところに一致

を与えてくださいますように、いつくしみ深い父に向って祈ります。

 教皇フランシスコは恵みの年として「御父のように、いつくしみ深い者となりなさ

い」( ルカ6・36 ) をモットーに、2015年12月8日の「無原罪の聖母の祭日」から

2016年11月20日の「王であるキリストの祭日」までの間を「いつくしみの特別聖年」

として定めました。この聖年を通して、わたしたちはより一層、神のいつくしみを希

望し、信じ、隣人愛に燃えていけますように、聖母の取次ぎを願って祈りを捧げたい

です。

  山鼻教会機関誌「おとずれ」’16/12月号より

 

 


 

グローバルの中で

                                主任司祭 場﨑 洋 神父

 

 9月2日の未明、トルコからギリシャに向かうシリア難民のボートが転覆し、12名

が溺死しました。定員を超えたボートは海に沈んで行ったのです。アブダラは妻と二

人の男の子を両腕に抱きあげましたが力尽きてしまいました。二人の息子と妻は溺死

しました。その後、末の息子3歳のアイランちゃんの遺体が浜辺に打ち上げられたの

です。そのときに撮られた写真が世界中に飛び回って、人々がこの画像を見て衝撃を

受けました。今世界は戦争で国を追われ、ボートで脱出した悲しい家族の物語を心に

刻まなくてはならないでしょう。写真を撮ったトルコ人カメラマンは、アイランちゃ

んの遺体を見て『血が凍りついた。私にできる唯一のことは、彼の叫びを世界に届け

ることだけだ」と語りました。わたしたちはアイランちゃんの悲劇から、今もなお、

シリアで戦争に怯え、泣き叫ぶ子供たちの声が聞こえてくるのを感じます。主よ、子

供たちに平安を与えてください。すべての人たちが主の道具となって平和のために働

くようにしてください。内戦でやむなく故郷を離れたシリアの人たちは400万(トル

コに190万、レバノンに120万、ヨルダンに60万)。さらに国内にとどまっている難

民は760万とされています。難民避難民を合わせると1,100万人にもなります。内戦

勃発前のシリア人口が2,200万人でありましたから国家の半分が家を失ったことにな

ります。9月初旬、ヨーロッパに流れたのがトルコに逃げていた難民でした。世界的

シンクタンク・経済平和研究所が毎年発表している「世界平和度・指数」によると最

下位の国は内戦が続くシリアで2年連続でした。

 世界がグローバルしています。戦争から逃れるため、アフガニスタン、スーダン、

シリアから多くの難民が安住の地を求めています。移動中に亡くなっていく難民も少

なくはありません。私たちに物語があるように、彼らにも物語があります。神様から

賜った同じ命でありながら、彼らは生き延びるために数千キロから1万キロの旅をし

ているのです。わたしたちに何ができるのでしょうか。今日もわたしたちは問われて

います。

  山鼻教会機関誌「おとずれ」’15/11月号より